酒母できあがり





≪醪造りの工程その10≫

酒母造りは温度が命。優良な酵母が増殖しやすい環境を整えてやるために、毎日、温度計でチェック。しかも、経過日数と共に温度をうまくコントロールしてやるのです、

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≪加温操作≫

仕込み水に麹、酵母のアンプル、富士酢を入れた後、50℃程度に冷ました蒸し米を入れて20℃にします。これが毎回、マジックのように温度計は20℃を差すのには杜氏の藤本の腕を褒めるしかありません。

このまま、翌日まで放って置くと品温は12℃前後まで落ちてしまいます。これは単純に部屋の温度が低いことが原因です。そこで、酵母がちょっとずつ増殖するように電熱器でタンクの下部を暖めてやります。その際、熱が逃げないようにムシロで覆いながら。

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≪仕込んで3日目≫

加温してやることによって、酵母の動きが活発になります。酵母はブドウ糖を食べて、アルコールと二酸化炭素をつくるので、小さな泡が表面に見えてきます。

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≪5日目≫

さらに泡が大きくなってきます。ただ、ウチでは泡なし酵母を使っているため、泡が高くなり、タンクから溢れそうな状態(高泡)にはなりません。これは、泡消し機や泡がさを使わなくてもいいというメリットがある反面、状態を判断するのが難しいというデメリットもあります。品温は15℃といったところ。

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≪7日目≫

酵母の増殖によって二酸化炭素が大量に発生することから、タンクの液面が上がってきます。この状態を「膨れ」と呼びます。1日に1〜2℃ずつ温度は上昇していきます。

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≪9日目≫

約20℃くらいに。もう酵母は十分に増殖しており、アルコール濃度もかなり高い状態。このまま酵母を増やしすぎることで、逆に酵母が弱ってしまいます。高アルコール下は酵母にとってもストレスのかかる過酷な条件なのです。この辺りから、増殖した酵母を休ませてやります。それを「枯らし」と呼んでいます。

酒母を造る目的は、大きなタンクでの仕込みに向けて優良な酵母を増殖させることですので、これからは品温を下げていきます。

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≪11日目≫



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≪13日目≫

いよいよ、酒母の出来上がり。

なんか、この写真では違いがわかりにくいですが、これを明日、大きな仕込みタンクに移し、大きなスケールでいよいよ醪(もろみ)の仕込みに。

そのために、タンクを綺麗に洗浄したり、汲み水と呼ばれる井戸水の温度を調整したり、と日陰の仕事が必要になってきます。それらは全て、杜氏や蔵人のチームワークで当たり前のように行われます。つくづく仕事って一人ではできないもんやなぁ、と感じるのでした。

                    五代目見習い 彰浩