バタバタしており、報告が遅くなりましたが、9月26日にイベントがありました。

一緒に仕事をさせてもらったイタリア人のクリスティアーノは食材のプロフェッショナル・テイスター、コンサルタント。食品の品質を見極めるための講義や研修を行い、スローフード協会をはじめイタリアの食科学大学院や食品企業、EU各国で活躍中です。

今回のイベントは、フードリテラシー研究会を主宰されている柴田香織さんからいただいた話でした。彼女についてはこちらをご覧ください。

さて、イタリアと日本の酢の対決、となると負けられないわけで。こっちも特別な酢を持っていったのでした。

イタリア×日本 酢対決



















イタリア×日本 酢対決4



















≪ワークショップの様子≫

会場は貝印さんの本社ビルにあるKai House。カミソリだけじゃなく、デザイン性の高い調理用具がいっぱい揃っていて、話を聞いているとどんどん欲しくなる。今はぺティナイフが欲しいということもあって、包丁のディスプレイに釘付け。そんな素敵な会場にスペースをつくっていただき、ワークショップは始まったのでした。

イタリア×日本 酢対決2



















イタリア×日本 酢対決3



















≪ティスティング≫

この日のティスティングは6種。

バルサミコは量産品の他に、トラディッツォナーレと呼ばれる伝統的な製法のもの2種。12年と25年熟成したもの。量産品にはワインビネガーやカラメル色素などを使っているのに対して、トラディッツォナーレはモストコットと呼ばれる、煮詰めたブドウジュースのみ。アルコール発酵と酢酸発酵が同時並行的に起こるそうな。酸度6.5と高いわりに酸味が柔らかなのは、ブドウ由来の酒石酸の割合が多いことや糖度が高いことが理由に挙げられます。

イタリア×日本 酢対決5

























≪クリスティアーノ≫

さすがプロのティスター。ティスティング姿がイケてます。香りを嗅ぐ際は、鼻に近づけたり遠ざけたり、3回くらい繰り返すそうです。また、チーズのティスティングなどは、チーズを二つに割って、すぐに両方の鼻の穴に近づけるそうな。

表現方法も、「大手メーカーの酢はメタリックな香り。富士酢プレミアムはバニラや木桶などのニュアンスがある」とか。いろいろ勉強になります。

それぞれの酢を単体で味わった後は、イタリア、日本それぞれが1品ずつ組み合わせの妙を伝えました。

イタリア×日本 酢対決7





















≪イタリア≫

クリスティアーノは28ヶ月以上熟成させたパルミジャーノ・レッジャーノとバルサミコ(25年熟成)のマリアージュを。まず、チーズの香りが全然違う。ファミレスとかに置いてあるパルメザンチーズとは別物。って、当たり前ですが。

チーズ由来の香りとコクにバルサミコの酸味と甘味が加わることで、奥行が増します。これ、しっかりめの赤ワインとか、酸も旨味も強い純米酒の燗にも合いそう。クリスティアーノ、なかなかやるなっ!

とはいえ、こっちも国の代表として参加しているわけで、負けるわけには行かない!(オリンピック代表モード)

イタリア×日本 酢対決8
























≪飯尾≫

さて、何から造った酢でしょう? もちろん、販売はしておりません。色から判断しようとしても、多分、わからないと思います。写真がないのですが、これをバニラアイスにかけて出したので、「バルサミコ?」と首をかしげてらっしゃいました。

これ、実は富士酢プレミアム。極弱火で数時間じっくりと煮詰めたもの。これはプレミアムだからこそできるやり方。他の酢では米の旨味も甘味も乏しいので、まずできません。火の大きさや火を止めるタイミングがむずかしい。火を入れすぎるとニガニガーなただのカラメルになってしまいます。そうなるとクリスティアーノ曰く「お前はもう死んでいる」状態に。

彼、打ち合わせのときにすごく気に入ってくれたようで、何度も何度もスプーンにとって味見をしていました。しまいには、私のクリアファイルに漆黒の液体をぶちまけたほど。数本、用意していたので、事なきを得たのですが。

参加者からの反応はというと、手前味噌ですが…。料理研究家の先生や職のプロもたくさんいらっしゃったのですが、この日一番のサプライズだったようで。誰一人、米から造った酢だとはわからなかったようです。香りもプルーンとかブドウに近い香り、それでいてバルサミコよりもしっかりとした酸味、そしてやわらかな甘味とほのかな苦味あり。褒め過ぎ? とにかく、濃厚なミルク感のバニラアイスとのマリアージュは満足していただけたようで、終了後にたくさんの方が感想を伝えに来てくださいました。それだけ、喜んでいただけたってことと理解しています。

イタリア、日本のどちらが勝ったかわかりませんが、お互いにとって、また参加くださった方にとって新しい発見があったことは確かです。

このイベントを企画してくださった柴田さん始め、ご協力くださった皆様、参加くださった皆様、そしてクリスティアーノに感謝。

                       五代目見習い 彰浩