年に一度の無花果(いちじく)もろみの仕込みが終わりました。

近年は果物から造った、いわゆる果実酢が人気です。ただ、こういうのはほとんどの場合が海外(中国やアメリカなど)からドラム缶で輸入した濃縮果汁が使われています。それを水で薄めて1週間ほどでワインを造り、それを24時間発酵させて酢にします。そして、再度、濃縮果汁を足してできあがり。裏を返せば、そのような原料から簡便な方法で造った果実酢は甘味を加えないと使えたもんじゃない、ってことでしょうか。

弊蔵では国産の完熟無花果だけを使いますので、仕込みはイッパツ勝負。これを失敗したら次がありません。というわけで、杜氏の藤本が慎重にアルコール発酵させたもろみ(酒)を酢の杜氏である相見、メカニックの山添が搾ります。

この日は土曜日。ナマモノと生き物相手だけに、休み返上でがんばってもらいます。とはいえ、翌日は稲刈りなので申し訳ないのですが。

無花果絞り



















無花果絞り2


























無花果絞り3



















無花果絞り4


























≪圧搾作業≫

二人で行います。山添がもろみ(酒)をキツネと呼ばれる手桶に入れ、酒袋に注ぎ込みます。水を一滴も使わずに無花果の水分だけで造った酒ですので、あたり一面、独特の甘い香り。

それを相見が受け取ると、腰をかがめて搾り槽(ふね)に並べていきます。これがけっこうな重労働。この仕事は1時間以上かかります。

無花果絞り5


























≪もろみ≫

そして、出来上がったのがこちら。これはすぐに火入れ(加熱殺菌)した後、酢酸発酵へ。ここから3ヶ月ほど発酵、そして1年以上熟成してやっと皆様のお手元に届くのでした。

この無花果酢は料理用です。健康のために酢を飲もうと思っていらっしゃる方は紅芋酢をおススメします。無花果や梨などの果実酢には酢酸以外にそれほど健康にいい成分が含まれていません。これは覚えておいてくださいね。そして、無花果酢ができるまでにどれだけの時間がかかるかということも。

                      五代目見習い 彰浩