先日、こちらで書いたように、蒸し米に種麹(もやし)を振った後の仕事をご紹介します。

32℃近くで麹室に引き込んだ米は翌日まで塊のまま過ごします。とはいえ、麹菌の増殖速度が遅く、温度が予定通りに上がらない場合は世話をしてやる必要があります。

麹室の仕事



















≪瓶を入れて保温する≫

お湯を入れた一升瓶で米の塊をあたためてやります。いわゆる「暖気(だき)入れ」という作業。杜氏の藤本や麹担当の今井は夜中に麹室に入って、温度を確かめ、ときにはこのような操作を行うのです。

麹室の仕事2



















麹室の仕事3



















≪温度チェック≫

無事に温度が上がってきた米は一晩のうちに水分が減り、米の表面に麹菌が繁殖しつつあります。ここからもひと粒ひと粒が固まらないように注意しながら操作をしていきます。

麹室の仕事4



















≪ブンジで塊を崩す≫

ブンジと呼ばれる木の道具を使って、固まった米塊を小さくしていきます。これがけっこうな力を必要とするわけで。室にはギシギシ、ギシギシという音が響きます。

麹室の仕事5



















≪さらに細かくほぐす≫

続いて、ひと粒ずつを手でほぐしていきます。これはけっこう楽しい作業。水分が抜けてパラパラになった米、なかなか魅力的です。

麹室の仕事6



















≪中仕事≫

その後は簡易製麹機に入れて、さらに菌が米粒内部に浸透するよう、ゆっくりゆっくりと温度を上げていきます。その間、発酵熱で温度が一気に上がらないように、時間を見計らって、米に空気を含ませてやります。この操作で温度がちょっと下がるわけ。ですから、温度が高い場合はこの作業を何度もする必要があります。夜中だろうが明け方だろうが、麹菌には関係ありません。彼らの機嫌を伺いながらの生活が続くのです。

ちなみに酒造りでは、一麹二酛三造(いちこうじ にもと さんつくり)と言って、一番大事なのは麹造り、次に酛(酒母:しゅぼ)造り、最後に全体の発酵、と言われています。だからこそ、麹室の中にお客様をご案内することはありません。それほど大事な場所なんです。

                       五代目見習い 彰浩