今朝はニューヨークからご夫婦が蔵見学に来てくださいました。奥様は元・有名なフードマガジンの関係者ということもあって、酢に関する知識もお持ちのようで。ご主人も興味深く写真を撮っていらっしゃいました。

私の片言もええとこの英語で説明したのですが、すごくわかりやすい英語で話してくださったので、なんとか会話になりました。あと、棚田や酒蔵の写真を見せたり、酢蔵の現場を見ていただきながらだったので。大学院時代に発酵や微生物関連の論文を読んでいたため、かろうじて英語の専門用語を覚えていました。えがったえがった。

さて、奇跡のりんごのアルコール発酵が終わりました。そして、昨日から2日間かけて搾りの作業です。

りんご酒の搾り



















≪りんごのドブロク≫

2週間以上かかって、やっとアルコール発酵が終わりました。今年は例年以上に発酵が遅く、心配しておりました。大量のすりおろしりんごからは凝縮された豊かな甘い香りが漂います。

これは、糖分を残した状態でアルコール発酵を止めているため。高濃度のアルコールを作ることで多量の酢を作ることはできますが、加水するため、りんごの旨味が薄まってしまいます。木村さんの苦労の結晶である奇跡のりんごに水を加えるということはできませんから。

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≪酒を手桶ですくう≫

2種類の手桶を使います。まずは丸い桶ですくい、それを「きつね」と呼ばれる、先が細くなった桶に移します。この道具、見学に来られた方は骨董品だと思っていらっしゃるようですが、いまだに現役バリバリです。これがないとええ仕事ができません。

というのは、

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≪酒袋に入れる≫

先が細くなっているからこそ、こぼすことなく酒袋に入れることができるんです。長年使うため箍(たが)がゆるくなるたびに組みなおしてもらいます。さすがにこの仕事はウチの瓶詰め責任者兼メカニックの山添もできませんから。

その酒袋をひとつずつ搾り槽(ふね)に配置していくのは酢造り杜氏の相見の仕事。ひとつの袋が約10kg。これを100以上も重ねていくわけです。

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≪重石を載せる≫

その日の仕事はこれで終わり。プレスはしません。この状態で一晩置くことでゆるやかに固液分離していきます。

そして、翌日の午前中からは、

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≪搾りの作業≫

「せーのっ!」の掛け声と共に4人でプレスしていきます。一度で終わりではありません。少しずつ水分が抜けることでプレスがゆるくなっていくため、30分置きに「せーのっ」の声が響きわたるわけで。

NYから来られたお二人もこの作業には興味津々のようで、写真をバシバシ撮っておられました。その後、「せーのっ!という言葉は英語でどのように書きますか?」とか「どういう意味ですか?」と聞かれました。「多分、Let's go!」と答えたのですが、ホンマか?

明日からはいよいよ蔵付きの酢酸菌を植えて、酢造りが始まります。発酵の終了はおそらく7月末ごろでしょうか。その後、熟成することを考えると、皆さんのお手元に届くまでにはまだまだ時間がかかります。

                       五代目見習い 彰浩