紅芋酒ができあがると、いよいよお酢の仕込みです。

お酢の発酵を司る菌、酢酸菌はアルコールを食べることで、お酢の主成分を排出します。日本で造られる酢の90%以上は、この発酵を約1日で済ませます。酢が1日でできるって、ご存知でしたか?

他方、飯尾醸造では紅芋酢だけでなく、すべてのお酢について昔ながらの造り方を守っています。その方法を静置発酵(せいちはっこう)と呼びます。発酵期間は約100日。つまり、100倍もの時間がかかるのです。

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≪植菌≫

紅芋酒の入った発酵タンクに酢酸菌の膜を浮かべます。いわゆる蔵つきの菌と呼ばれる、創業当時から100年以上も植え継がれている菌。

この膜が4、5日で表面全体に広がることで、酒が酢へのじわじわ変化していくのです。

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≪酢酸発酵の様子≫

これは発酵後、1ヶ月ほど経過したときの様子。紅芋に含まれるアントシアニンのため、鮮やかに発色しています。

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≪ムシロを被せる≫

ちなみに、膜を浮かべた後はムシロをかけて保温します。蔵の中は冷暖房が入りません。そのため、季節によって、ムシロの枚数などを調整します。温度を測り、膜の状態を見ながら発酵の進み具合をチェックするのは、お酢蔵の杜氏、相見。もう20年以上のベテランです。

まもなく酢酸発酵が終わり、熟成に入ります。皆様のお手元に届くまであと少し。紅芋酢は発売から約8年。ちょっとずつ品質(健康価値)が高くなっています。アントシアニン含有量の多い芋の品種に切り替えたり、原料をより多く使ったり、醸造方法を工夫したり。値段は変わらなくても、味はまろやかに、機能性は高く。これからも、皆様に飲み続けていただけるよう、ええもんを造っていきます。

                    五代目見習い 彰浩