10回目は醤油をご紹介します。

醤油は用途によって使い分けると、家庭での食事がより美味しくなります。その大前提として、醤油は劣化が速いので、必ず冷蔵保存してください。

醤油差しに入れて食卓テーブルに置いておくと、どんどん美味しくなくなります。できれば醤油差しも小さなものを使っていただく方がいいと思います。もちろん、なくなったら容器を洗ってください。

飯尾家の醤油


≪醤油3種≫

右は片上醤油(奈良)の濃口 天然醸造醤油。

コクとまろやかさ、香りのバランスがすごくいい、飯尾家の定番。万願寺とうがらしの炊いたんはじめ、煮物にしたときに一番力を発揮するような気がします。

真ん中は同じく片上醤油(奈良)の淡口 天然醸造醤油。

色をつけたくないお吸い物や煮物などにはこれ。薄口は小麦9割に大豆1割ほどしか使わないため、淡い色に仕上げることができる反面、旨みが足りなくてとがった塩味になることが多いのですが、これは旨みたっぷり。

左は弓削多醤油(埼玉)の吟醸純生しょうゆ(海の精使用)。

火入れ殺菌をしていないため、フレッシュな香りが素敵。白身の刺身や鮨はこれが一番合うと思います。江戸前鮨に使う煮切り(味醂や酒と醤油を合わせて加熱したもの)の代わりに使ったら、鮨がもっともっと美味しくなるはず。

飯尾家の醤油2


≪色の違い≫

左から片上醤油の濃口、弓削多醤油の生、片上醤油の淡口。

醤油の色は大豆の量とアミノ酸や糖の量、熟成期間などで変わってきます。アミノ酸同士が、またアミノ酸と糖が結合することで褐変するのは味醂や酢も同じ。

料理によって使い分けるとより美味しく、楽しい。「そんな贅沢できない」と思われる方、こういう料理を楽しむようになると外食が減って、結果的に食費が減ります。

決して大きなお金がかかるわけではないのですが、多くの時間を過ごす自宅での食事にコクや旨みがプラスされるはずです、醤油だけに。

最後に。

どこの醤油を買えばいいですか、とたまに聞かれます。そのとき、私は必ずこのように答えます。

   〇〇醤油さんの△▽という商品が好きです。

なぜなら、ほとんどの醤油屋さんがメインに造っている醤油は量産品で品質はそれなりのもの。つまり、自社で造る醤油の極々一部、ある商品だけとびっきりええもんを造っているわけです。飯尾醸造は量産品は造らないことにしております。

富士酢をお使いいただいている皆様には、ええもんを見分けて幸せな食生活を送っていただきたいと思っています。これからもそのお手伝いができれば幸せです。

         五代目 彰浩