お酢と対局にある調味料といえば、みりん。

というのも、近年、お酢は調味料から飲料用へと用途が変わったように、みりんも大きく用途変換した調味料なのです。みりんは戦国時代から江戸時代まで、女酒などと呼ばれ、下戸の人に親しまれてきました。その後、江戸時代後期から少しずつ調味料として使われ始めたようで。そして高度成長期に本みりんが大幅減税されたことによって、調味料として一般に普及したという歴史があります。

スーパーにはみりん風調味料と呼ばれるものもありますが、料理には本みりんを使いたいものです。なぜなら、

 1.まろやかな甘みがある
   砂糖(ショ糖)とは違い、様々な糖でできているため自然な甘み

 2.コクや旨みがある
   米由来のアミノ酸や有機酸が料理に奥行きを与える

 3.テリとツヤが出る
   様々な糖が含まれているため

そんな本みりんのイチオシが、岐阜にある白扇酒造の本みりん。みりん屋さんではめずらしく、麹から手造りされているすばらしい蔵です。

福来純三年熟成本みりん


≪福来純 三年熟成本みりん≫

これを初めて口にしたとき、びっくりしました。

まず、鼻を近づけると。
アルコールの刺々しいアタックではなく、米由来の複雑怪奇であまやかな香り。
続いて、口に含んでみると。
くちびると舌に触れた途端、トロンとまとわりつくような濃度感とやわらかい甘み。マロングラッセをドリンクにしたらこんなイメージでしょうか。

もちろん、料理用に使うことが多いのですが、まずは味わってみてください。日本人は海外に行く時、これを携えるだけで日本の評価が上がるのではないかとも思ってしまいます。

普段、煮物にはもちろん、麺つゆにもほんの少し使って楽しんでいます。実は、この白扇酒造では他に、こんなものも販売されています。たぶん、蔵限定。

福来純三年熟成本みりん2


≪福来純 古々美醂≫

10年熟成のみりん。真っ黒。透明のビンに入っているとは思えませんね。

福来純三年熟成本みりん3


≪熟成年度別≫

実は、熟成なしの透明のみりんも分けていただきまして。これ、あるワークショップで使わせていただいています。ホンモノを知るというテーマの。

熟成なし、三年熟成、そして二十年熟成。二十年物は売っていないのですが、約十年前に買ったものを自宅で寝かせていたのです。

ここまでくるとみりんとは思えません。さらにアルコールのアタックは穏やかになり、カカオやチョコレートのような香りと、少し酸味を感じらるようになります。完全に食後酒。この熟成年度別のティスティングはテンションあがります。

そんな福来純のお酢屋ならではの楽しみ方がこれ。

福来純三年熟成本みりん4


≪本みりんの紅芋酢割り≫

三年熟成の本みりんをグラスに入れたらティースプーンで紅芋酢をほんの少し、そーっと浮かべます。みりんと酢の比重の違いで琥珀色と紅色のきれいな二層に分かれます。あとはそーっと氷をひとつ。みりんの甘みを紅芋酢の酸味がやわらげて、より奥深い味わいに。

お客様のもてなしに十分なサプライズと美味しさを感じていただける、調味料同士の食後酒。おためしください。

        五代目 彰浩